卵は手ごろな値段で手に入り、家庭の食卓には欠かせない存在の食品ですよね。
とくに黄身の部分にあたる卵黄の栄養価は高く、卵の栄養のほとんどは卵黄にあるといっていいくらいなんです。
ここでは、そんな卵黄に注目して栄養成分などについて解説しています。
卵黄の成分の効果や効能
卵黄の栄養成分には、下記のような効果や効能が期待できます。
- 疲労回復&疲れにくくなる
- 脳が活性化し記憶力が向上
- 体の成長や発育がよくなる
- 悪玉コレステロールを減少させる
あまりにも身近すぎて卵についてそんなに知らないという方が多いと思いますが、卵は栄養価の高い優秀な食品なのです。
そもそも卵ってどんな食品?
卵黄について話すまえに、卵とはそもそもどんな食品なのかを知りましょう。
卵はほぼ全ての栄養素を含んだ完全栄養食品
卵は繊維質とビタミンC以外のほぼ全ての栄養素をバランスよく含んだ食品です。「完全栄養食品」といわれ、人間が健康を維持するために必要な栄養素が多く含まれます。
卵を食べる目線ではなく一つの命とみたときに、卵からひなが生まれるまでは、卵殻の外から一切の栄養をとらずに中で育ちます。そう考えると卵の栄養って必然と高くないといけないですよね。
卵はアミノ酸スコアとプロテインスコアが最高点の100点
卵はたんぱく質が豊富な食品で、たんぱく質の性能を点数化したアミノ酸スコアとプロテインスコアでは、いずれも最高点の100点になります。これは肉や魚などのたんぱく質が多いとされる食品よりも抜きでて1位を獲得します。
たんぱく質を構成する体内でつくられない必須アミノ酸の9種類もバランスよく含まれ、脳や神経、筋肉や血管などの組織をつくったり保つために卵は効果的であり、まさにスーパーフードといえるでしょう。
卵の栄養は卵黄(黄身)に集中している
卵の主成分のほとんどは卵白の白身の部分ではなく、卵黄の黄身の部分に集中しています。卵の役割的には、卵黄はひなの栄養分になり、卵白は雑菌から守るなどの役割があります。
卵白の90%近くは水分で、残りはたんぱく質という構成です。また、卵白に含まれるリゾチームという酵素は、細菌を溶かす作用があり、医薬品や食品保存料などにも応用されています。
ここからわかるように、卵白よりも卵黄のほうが栄養価が高く、卵の栄養は卵黄の栄養といってもいいでしょう。
卵黄の仕組み
卵黄は、テヘブラ、胚、淡色卵黄層、濃色卵黄層、卵黄膜からできており、水分が50% 、脂質が33%、たんぱく質が33%で構成されています。
ドロっとした卵黄の表面を包んでいる薄い膜が卵黄膜で、とれたての新鮮な卵ほど卵黄膜がしっかりしているため、平らな皿に落としたときに卵黄が大きく盛り上がり、CMなどでよくみるような指でつまみあげることができます。
この卵黄膜の表面には白い数ミリの点のようなものがついており、これは有精卵ではやがてひなが育つ胚盤になります。したがって黄身の部分の卵黄がひなになるわけではなく、卵黄はひなになる杯盤のための栄養源です。
また、一般的にスーパーなどで手に入る卵は多くが無精卵のため、胚盤の代わりに卵核があります。
胚盤と卵黄の中心部を繋いでいる部分がラテブラです。ラテブラは高温でも凝固しない性質があるため、固ゆでにした卵でも中心は固まりにくい性質があります。
卵黄の栄養成分
一般的に手に入る鶏卵の卵黄100gと、Lサイズ一個17gあたりの栄養成分について表にしています。
卵黄の基本栄養素
成分名 | 100g | 1個(17g) |
---|---|---|
カロリー | 387kcal | 66kcal |
たんぱく質 | 16.5g | 2.8g |
脂質 | 33.5g | 5.7g |
炭水化物 | 0.1g | 0.02g |
灰分 | 1.7g | 0.3g |
食物繊維 | 0g | 0g |
卵黄には食物繊維は一切含まれず、炭水化物はかすかに含まれている程度です。
また、一般的に手に入る鶏卵の卵黄一個では約17gの重さであるにもかかわらず、脂質が多くカロリーは約66kcal(カロリー)と高めです。
ですのでたくさん食べてはいけないのかな?と思うかもしれませんが、後述しますが、健康であれば一日に卵白を含めた全卵を2個~3個食べても問題はありません。
卵黄のビタミン
成分名 | 100g | 1個(17g) |
---|---|---|
チアミン(B1) | 0.21mg | 0.04mg |
リボフラビン(B2) | 0.52mg | 0.09mg |
ナイアシン(B3) | 0mg | 0mg |
ピリドキシン(B6) | 0.26mg | 0.04mg |
葉酸(B9) | 140μg(マイクログラム) | 24μg(マイクログラム) |
パントテン酸(B5) | 4.33mg | 0.74mg |
ビオチン | 65.0μg | 11.1μg |
C | 0mg | 0mg |
卵黄にはビタミンCは一切含まれていませんが、それ以外のビタミン類はまんべんなく含まれ、とくにビオチンは多いですね。
卵黄のミネラル
成分名 | 100g | 1個(17g) |
---|---|---|
ナトリウム | 48mg | 8mg |
カリウム | 87mg | 15mg |
カルシウム | 150mg | 26mg |
マグネシウム | 12mg | 2mg |
リン | 570mg | 97mg |
セレン | 56μg(マイクログラム) | 10μg(マイクログラム) |
鉄 | 6.0mg | 1.0mg |
亜鉛 | 4.2mg | 0.7mg |
ミネラルではカルシウムやリン、鉄や亜鉛などまんべんなく含まれますが、そのなかでもセレンは卵黄1個で1日あたりの目安量を上回ってしまいます。
このように卵黄にはたんぱく質だけではなく、ビタミンやミネラルが豊富に含まれていることがわかりました。
卵黄特有の成分であるレシチン
卵黄特有の成分であるレシチンについて解説しています。
レシチンとは?
レシチンとは、膨大な細胞の一つ一つに含まれるリン脂質の一種であり、フォスファチジルコリンともいいます。レシチンは人間の体にある細胞膜の主成分であり、脳や神経系の働きなどを正常におこなうための重要な役割があります。
そして、このレシチンは卵黄にも多く含まれており、レシチンを摂ることでさまざまな効果があります。
認知症の予防をするレシチン
レシチンは神経伝達物質であるアセチルコリンの材料となり、脳の機能を活性化させます。
これは認知症などの記憶障害に効果があると注目されており、とくに卵の卵黄にはレシチンが豊富なため、脳の老化を防ぐと言われています。
このレシチンを含んだ食品として有名なのがにんにく卵黄です。滋養食品としてのイメージが強いと思いますが、名前の通り卵黄が使われているため、手軽にレシチンを摂取することが可能です。
脂肪肝を防ぐレシチン
レシチンは脳を活性化するほかに、悪玉コレステロールや中性脂肪を外に追い出し、肝臓につきやすい脂肪を防ぎます。
レシチンは血中のコレステロールや、中性脂肪などを運ぶための善玉コレステロールの成分でもあるため、高血圧や動脈硬化が心配な方にもレシチンはおすすめです。
卵黄のコレステロールが心配な方へ
よく「この食品はコレステロールが高いから食べすぎはよくない」というフレーズを耳にしますが、数ある食品の中でも卵黄はコレステロールが高い食品として有名です。
コレステロールが多い食品の特徴は、卵や魚卵、肝などが挙げられます。下記の表は100gあたりのコレステロールの多い食品です。
食品 | コレステロール(mg) |
---|---|
卵黄のみ | 1,400 |
あんこうのきも | 580 |
いくら | 480 |
卵(全卵) | 420 |
うに | 290 |
豚肉(レバー) | 250 |
表をみるとずば抜けてコレステロールが高いのが卵黄です。
卵白をふくめた全卵が100gあたり1個60gだと約1.7個分になり、卵黄のみだと100gあたりが卵黄が1個17gだとして約6個分ですから、卵黄に多くのコレステロールが含まれているのがおわかりだと思います。
じゃああまり食べないほうがいいのではないか?と思われるかもしれませんが、コレステロールは体に必要な物質です。
次ではコレステロールに対する間違った考えについて解説します。
そもそもコレステロールってなに?
まずコレステロールとは、私たちの体を構成している60兆の細胞膜や、細胞をささえる働きがあり、また脳の情報伝達物質やホルモンの材料の一つでもあります。
さらに脂肪を消化するために必要な胆汁酸の原料にもなっており、人間にとってなくてはならない重要な栄養素です。
脂質の一種であるコレステロールはそのほとんどを体内の肝臓で生成されており、残りは食品などから吸収されています。そして、このコレステロールは2種類に分けることができます。
1.LDL(悪玉)コレステロール
LDLコレステロールは悪玉コレステロールともよばれ、なじみの方も多いと思います。役割は主に運び役です。血液から全身をめぐってコレステロールを運びます。
2.HDL(善玉)コレステロール
HDLコレステロールは善玉コレステロールともよばれ、こちらもなじみの方が多いかと。役割は悪玉コレステロールの回収役です。
LDLコレステロールが悪玉と言われる由縁
LDLコレステロールが悪玉と言われる由縁は、悪玉コレステロールが酸化することで血管内にこびりついてしまい、血流が悪くなったことで血栓ができやすい状態になり、動脈硬化などの危険性が増えるからです。
このことから悪玉と呼ばれてしまうことになりました。しかし、善玉(HDL)や悪玉(LDL)などと分けられているものの、どちらも低すぎても高すぎても体の健康に支障をきたすので、大切なのはかたよりのないバランスです。
コレステロールが悪者になってしまった背景
卵黄と聞くと、健康志向のかたには「コレステロールが高くてダイエットや成人病予防にはよくない!」と思い浮かべる人も少なくありません。
これは、日本動脈硬化学会が過去に定めた治療指針のなかに、高脂血症や心筋梗塞を引き起こす可能性が高いコレステロール値を、「総コレステロール値」で基準化していたことが大きく反映されているといえるでしょう。
「総コレステロール値」とは、善玉コレステロール、悪玉コレステロールに関わらず、全てのコレステロールを数値化したものです。そのため、善玉コレステロールが多く治療が必要でない人に対しても過剰診療や過剰投薬が行われていたのです。
したがって、善玉コレステロールが体に良い影響をもたらす食品でも、「コレステロールが高いから健康に良くない」というようなイメージが広まってしまう結果となってしまいました。こういったことからコレステロールが悪者のイメージになってしまったようです。
しかし、こうした医療現場での実態を受けて、2007年にはコレステロールの基準値を、悪玉コレステロールの数値に絞った改正が行われました。
さらに厚生労働省から発表された「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、以前までは1日のコレステロールの目標量が男性が70mg未満、女性が600mg未満でしたが、目標量がなくなり、卵と各種疾病とは関連は認められなくなりました。
そのため、1日に2個以上卵を食べても脳卒中や心臓病には影響はないという結論になりました。
卵黄には良質なコレステロールが含まれる
卵黄には良質のコレステロールが含まれているだけでなく、レシチンやオレイン酸など、善玉コレステロールを増やしたり、とり過ぎたコレステロールを調整する作用があります。そのため、卵黄はコレステロール値が上がらないとされています。
前述しましたが、コレステロールは人体の細胞を作る大事な働きや、ホルモンや神経細胞の元となる働きもあるため、良質で新鮮な食品を毎日摂取することが望ましいとされています。
卵黄のコレステロールは成人病の原因のひとつである内臓脂肪を増やす要因が少なく、同時にさまざまな栄養素を摂取できる良質な数少ない食品ですので、高脂血症や正常なコレステロール値が高い方以外は、1日2~3個くらいの摂取なら神経質にならなくて大丈夫でしょう。
まとめ
卵黄にはたんぱく質やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれる、完全栄養食品だということがわかったと思います。
また、卵黄に含まれるレシチンは脳の活性化や善玉コレステロールを増やす働きがあるため、健康体の方ならコレステロールを気にせずとも、1日に2~3個はすすんで摂ってもいいでしょう。
積極的に食べていきたい卵黄ですが、気軽に卵黄の栄養やにんにくの成分も摂ることができる「にんにく卵黄」という食品もあるので、ご参考にしてくれると幸いです。
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